日本酒入門  120617

 日本酒のファンになったのが1990年頃。当時、地酒は「淡麗辛口」ブームでしたが、米の削り具合や酵母が出す香りといった吟醸酒が注目を浴び始め、純米は悪酔いしない、大吟醸はフルーティといったことを認識し始めたことを記憶しています。日本酒ファンとして知っておきたかった情報を以下に整理しました。一緒に日本酒を楽しみましょう。

○事実データ

・日本酒メーカは40年前の3500軒から1500軒と激減
・普通酒が7割、純米吟醸/大吟醸が6%、純米が10%、吟醸/大吟醸が4%、本醸造が11%
・純米系は16%(2001年12%から増加)、アルコール添加の吟醸酒/大吟醸+本醸造は15%(2001年20%から減少)

○1989年酒税法改正

純米、本醸造、吟醸などの区分は1989年の酒税法改正による
精米歩合が50%以下で大吟醸純米/大吟醸、60%以下で吟醸純米/吟醸、それ以外70%以下で添加アルコールありで本醸造、添加アルコールなしは単なる純米酒
この他、特別な製法をしていれば特別純米、特別本醸造と呼ぶ

○アルコール添加(三増酒)

・米不足に見舞われた第二次世界大戦後、日本酒メーカはサトウキビなどを発酵させ、蒸留して得たアルコールを添加し、糖類で味を調える甘めの日本酒に切り替えた。
・原酒の3倍も酒ができるようになり、酒税確保を目指す政府もこの製法を認めていた。三倍増醸酒(三増酒)と呼ばれた。
・淡麗辛口ブームは糖類まで入った甘めの酒への反動だったが、添加するアルコールで香りを引き立たせる技術の確立にも貢献。
・全国新酒鑑評会(酒類総合研究所主催)ではアルコール添加の吟醸酒が主流。香りを競う品評会では純米では賞がもらいにくい
・純米酒:うまみ成分が豊富で、飲みごたえがあるが、その反面癖も強い
・アルコール添加の酒:味が軽めで飲みやすいが、添加しすぎるとうまみが消える。酵母が出す香り成分を少量のアルコールを使って引き出すのが杜氏の腕

○生酛と山廃とは

・生酛(きもと)とは江戸時代に確立した伝統的な酒の製法で、天然の乳酸菌の力を借りて、酒の元になる酒母を作る方法
・タンクに蒸した米と米麹、水を入れ、蔵に住みついた乳酸菌に乳酸を作らせる
・乳酸が雑菌や不要な野生酵母を殺したところで、アルコール発酵に必要な酵母を投入する
・培養された酵母も生命力が強いものが生き残り、この酒母を使ってできた酒は重厚なうまみと酸を伴う味になる
・醸造には30日以上かかる
・この過程で最も人出のかかる作業が、雑菌が動かず、乳酸菌が活動しやすい気温5℃ぐらいの寒さの中で、蒸米と麹と水を混ぜ合わせる「山卸し」、かゆ状になるまで丸一日かける
・人件費も手間もかかるこの作業を廃止しても、蒸米の投入を遅らせることでほぼ同様の酒母ができることが明治時代にわかった。この手法を「山卸し廃止(山廃)」と呼ぶ
・これに対して現在造られている酒のほとんどは、水に人工的に乳酸を加え、蒸した米と麹を混ぜる「速醸」で、2週間程度で酒を醸造できる

○日本酒ができるまで

玄米→精米→蒸し→製麴→酒母造り→もろみ造り→上槽→濾過・火入れ・貯蔵・加水→瓶詰め
      蒸し→→→→酒母造り→もろみ造り
      蒸し→製麴→→→→→→もろみ造り
      (でんぷん)(糖) (アルコール)
・製麴:カビの一種の麹菌を加え米麹をつくる
・酒母造り:蒸した米、米麹、水、酵母を入れて、もろみ造りの元となる酒母をつくる。米麹が米のでんぷんをブドウ糖に変え、酵母がその糖を食べてさらに増えていく
・もろみ造り:蒸した米、米麹、酒母を混ぜて仕込む。米麹が米のでんぷんを糖に変え、酵母が糖をアルコールに変える
・上槽:もろみを搾る

○地酒の挑戦「旭酒造」

獺祭で有名な旭酒造、原料米を77%削り、中心の23%だけ残した「磨き二割三分」を筆頭に、精米歩合を変えた純米大吟醸しか作らない
・酒米は山田錦にこだわり、精米歩合が近い他社の純米大吟醸より3割安い
・伝統的な杜氏制度を廃止、杜氏の勘に頼ってきた非科学的な酒造りと決別
・多くの蔵が酒の仕込みを気温の低い冬にだけするのに対して、旭酒造は年延べ400回以上仕込む、蔵を気温5℃に保ち、常に冬を維持する、四季醸造と呼ばれる製法