渡辺淳一の「究極の愛」とは

                 (1999年3月ホテルオークラでの講演メモ)

・理でないリアリティを語りたい
・狂おしい愛を表現したい
・至上の愛は決して長くは続かない
・男性は女性を、女性は男性を独占したい、エゴイストになる
・結局長続きはしない

・自然科学は蓄積して進歩していくもの、男女の愛はそれができない、進歩しない、一代限りである、体験しないとわからないものである、先陣の実績として残せないものである

・年老いても年がいなく堂々と生きてほしい、大家政子のように
・夫婦生活をいつまでも続けたいなら夫婦の対話をあまりしないほうが得策

○中年夫婦の話1

・歯磨きのチューブで夫婦喧嘩、旦那は几帳面でお尻から丁寧に折る、奥さんは雑にチューブを使う、そのことで旦那が奥さんに文句をいった、そしたら3倍になって旦那への文句が返ってきた
・夫婦生活はいずれ惰性となる、愛は移ろうものである、愛の許容範囲が狭まっていく

○中年夫婦の話2

・旦那は高校の教師、奥さんは専業主婦、旦那は午後6時には帰宅、それも毎日、7年間続けて、奥さんの不満「たまには遅く帰ってきてほしい」、毎日朝6時帰宅なら文句言われないか(笑い)
・結局、二人は離婚、旦那は奥さんの真意がわからない

○松田聖子の話

・忙しい松田聖子、神田正樹夫妻は久しぶりにお互い時間があり、夫婦の会話をした、その結果、離婚となったとさ

○銀座のママの話

・銀座のママはある会社の役員と不倫、毎週土曜日彼女のマンションに泊まっていって翌日帰宅
・ある日、この役員を駅まで見送る、その途中のスーパで役員は割り引きの歯ブラシを半ダース購入、それ以降ママは役員と別れた
・彼女は役員の男らしい側面に魅力を感じていたが、歯ブラシの購入行為をみて幻滅

○安部貞の話(失楽園創作の背景)

・昭和11年の話、美しい貞は慶大の学生に強姦され、それ以来水商売を転々とする、名古屋、大阪と渡り、東京に戻る、中野の小料理屋に住み込みで働き始める

・小料理屋の吉蔵は明治38年生まれの好男子、貞30歳、吉像43歳、手の早い吉蔵は当然彼女と関係を結ぶ、吉蔵も貞に惚れ、二人は小料理屋を出て生活するようになる

・金が無くなると吉蔵は中野に戻り金を持って再び貞のところへ

・肌と肌の触れ合い、セックスの繰り返し、吉蔵を外に出したくない貞は吉蔵に彼女の赤襦袢を着せた

・セックスだけでは至上の喜びを味わえないことに気づきお互い首を締めることによる歓喜を味わう、これを繰り返すうち、もっと首を締めて、といいあうようになる

・そして貞は吉蔵に「もっと首を締めてくれ」といわれ、死に至る、そこで貞は自分にとって大切な吉蔵のペニスを切り取り、二人の至上の幸せを血で書き綴る

・そこから貞は逃避行、しかし、名古屋?で逮捕

・裁判へ、このときの口述筆記したものが世の中に出回り大論争、狂気の貞云々

・弁護人は現在の鎌倉市長の祖父、彼は彼女を弁護した、彼女の至上の愛を陳述、結局懲役6年の実刑(模範囚で5年で釈放)、当時2・26事件のあったとき、社会全体が軍国主義に傾き始めていたことに対する不満、全体主義へのアンチテーゼとして軽い刑となった

・1980年には伊豆で死亡とのうわさ
・これに触発されて失楽園を創ったとのこと

・失楽園での最後の場面、死なせ方に苦労、最近の都市ガスでは死ねないと都市ガスの社員に教えられた、きれいな気持ちのよい死に方、耳掻き分の粉を最高のフランス赤ワインで


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