ブロードバンド時代の企業革新

                                   中谷巌氏講演メモ020207
・IT革命はバブルか?→Noである
・ITインフラが準備できれば企業は万全か→Noである
・単にITシステムを導入しただけでは,他社との差異化ができない時代になった
・IT革命はデジタル革命か?→Noである

●IT革命はアナログ革命である

・IT革命ではデジタル化される形式知はアウトソースされ、デジタル化されないアナログ情報、すなわち、人々に感動を与えることに焦点が絞られる
・すなわち、IT革命は人々に感動(企業用語でソリューション)、すなわち、デジタル化できない暗黙知を与えるアナログ革命である
・デジタル化できないアナログ情報、暗黙知をどれだけ蓄積し,それを生かした独自性を確保できるかが鍵である

●ネットバブルは何故弾けたか

・主権が企業から消費者にシフトしたこと、インタネットを使ってもっとも安いものを簡単に購入できるようになったこと
・購入しやすい(安くなった)コモディティ化が進み、その中で競争が激化したこと
・それに伴い広告宣伝費が増大し、結局マージンを確保できなくなったこと
・デジタル情報だけのIT戦略を取る企業は,競合他社にすぐに追随され,価格競争と模倣戦略にはまってしまう
・要するにデジタル化されない暗黙知(アナログ情報)が重要となる
・例えば、一郎の高打率は暗黙知である、デジタル化できない彼のみぞ知るアナログ情報、これがネットバブル時に欠けていたものである

●インタネットはブロードバンドへ

・ブロードバンドとは常時接続である
・P2P、インタネットコミュニティが進み、SonyMusicのビジネスモデルも変革
・バーチャルユニバーシティやeラーニングは間違いなく進化する
・ただこれらは道具であり必要条件でしかない、大切なのは十分条件、つまりコンテンツ、教える中身である
・企業と顧客のインタラクティブが重要である

●IT革命の歴史的意味

・産業革命は人間を肉体労働から解放した、100人の仕事を1人にした、99名は失業した
・産業革命後,機械に仕事を取られたショックから覚めた労働者たちは,空いた時間を使って,今まで存在しなかったクリエイティブな仕事を新たに見つけ出した
・IT革命は人々を会議や伝票の作成、資料整理などの情報処理雑用から解放した
・時間はかかるかもしれないが,人々はより新しく,よりクリエイティブな仕事をきっと考え出す
・つまり、形式知を徹底的にアウトソースしたのがIT革命であり、さらに究極はアナログ革命である
・IT革命により形式知のバリューは限りなく低減し、暗黙知の創造が競争の原点となる

●日本的経営は何故駄目なのか

・昨今の日本的経営は長期継続的関係による情報処理の効率化でしかない
・ところが、IT革命、すなわちアウトソーシング革命によって長期継続的関係によるメリットが薄れてしまった
・マーケット機能の効率化に対応した、より柔軟な企業組織に変革すべきである
・現状のコアと周辺の再編が必要、つまり知識創造を加速すべし
・アナログ情報(暗黙知)とデジタル情報(形式知)を区別せよ
・ROE:株主資本利益率が日本企業は極端に低い
(米国20%、ドイツ15%、日本1%)
・小泉さんが政治改革とほえても、まずは企業改革が先決、利益を生み出す企業自身がまず改革しない限り政治改革による施策は大方税金の無駄使いとなるだけ
・グローバル化に乗り遅れた日本企業はコーポレートガバナンスが欠落している
・「資本の論理」が大切なのに、相変わらず「組織の論理」を優先しすぎ
・今の不況の原因はこの「組織の論理」を重視する日本独自の構造上の問題
・組織の論理とは
 −GHQ運動(GoHomeQuickly)を日産でやった、女性社員は喜んだが、上司の部長は怒った、翌年度の残業予算を減らされてしまうからGHQ運動を止めよと
 −身内の論理、共同体の論理、内部の人間にとって温かさが伴う
 −組織論理は無意識に強く働くものでグローバル競争の中では致命傷になる、
・IT革命に乗り遅れた事例
−コンピュータに任せられる仕事をいつまでも人件費の高い人間にやらせている
−社員をもっと創造的な仕事にシフトしないと競争に勝ち残れない
・巨大なコモディティ化の波
−中国の労働単金は日本の1/30、日本製品の模倣に長ける中国
−2000年4万円のDVDが今は1万円

●価値を生み出す4つのビジネスモデル

▽コスト削減追求型(ユニクロ)
・ユニクロの中国進出、徹底したアウトソーシング、後追いは駄目
・コモディティ化のスピードが早いので先取り型コスト削減が必要
・自己価格破壊が必要
・ユニクロは今、ロンドン進出、欧州進出、米国進出を進めている、お手並み拝見
▽バリュースライサー型(インテル、MS)
・ペンティアム(インテル)、windows(マイクロソフト)、さびないボルトなど完成品の一部に特化
・コアコンピタンスを確立、ハイリスクハイリターン
▽バリューオーガナイザー型
・バリュースライサーが供給する部品を編集し完成品に組み立てる
・日本人の苦手な「ブランド」戦略が重要
・わざと品薄感を出す(日本人はできない、増産しどんどん売ってしまう体質)
・ブランドは暗黙知である
・ルイビトンのブランド戦略:品薄感
・ゴーン革命の本質、コストカッターからブランド戦略
・ソニーのVAIOもブランド戦略
・ブランド構築には時間がかかるが、崩壊は一瞬(雪印)
▽トータルソリューション型
・販売代理から購買代理へ
・アスクルの通販チャネル

●まとめ

・ビジネスモデル自体がコモデヒティ化してしまうことを危惧
・独自の味、暗黙知を付けよ
・コーポレートガバナンスの欠如/IT戦略の欠如/リーダシップの欠如
・ブロードバンド戦略はCEO自らの使命である
・企業の経営者はコーポレート・ガバナンスを確立し,しっかりとしたIT戦略とリーダシップを持て