■双蝶々曲輪日記 引窓
大坂で人気の相撲取り濡髪長五郎(白鸚)は、恩人を救う為に人を殺めてしまい、
母お幸(幸雀)のもとを訪ねて来ます。
わが子との久々の再会を喜ぶお幸でしたが、
そこへ家主である義理の息子、与兵衛(幸四郎)が帰ってきます。
皮肉なことに、父の跡を継ぎ代官に取り立てられたばかりの与兵衛の初仕事は、
長五郎を捕縛することでした。
しかし長五郎とお幸が実の親子であると気づいた与兵衛は、
お幸の気持ちを察し、長五郎を落ち延びさせるのでした。
実子と義理の息子の間で苦しむお幸と、その気持ちを察する二人の息子、
そして与兵衛の女房お早(高麗蔵)。
月明かりの差し込む引窓を巧みに使いながら、お互いを気遣う人々の苦悩と情愛を
描いた情緒溢れる義太夫狂言の名作です。
■色彩間苅豆
浪人の与右衛門(幸四郎)と腰元のかさね(猿之助)は、
道ならぬ恋の果てに心中を約束した仲でしたが、与右衛門は土壇場で逃亡。
追ってきたかさねと木下川の堤で再会します。
川面に流れてきた髑髏に刺さった鎌を与右衛門が引き抜くと、
美しいかさねの顔が、見るも恐ろしい形相に変化します。
これは、与右衛門が行った悪事の因果。
実は、与右衛門はかさねの母と密通し、義父を殺していたのです。
与右衛門は義父を殺した鎌でかさねを殺しますが、
今度はその怨念が与右衛門を襲うのでした。
色模様から壮絶な殺し場に至るドラマ性に満ちた怪談舞踊を、猿之助のかさね、
幸四郎の与右衛門が見事に演じます。