SONY出井会長講演メモ
−IT革命の真髄−


イントロ

・拍手に迎えられ、ダンディな姿で登場(一見俳優さんの出で立ち)

・黒のセータ、ノータイでブレザー姿、と思ったら風邪をひいているとのこと。セータのためにネクタイが見えなかっただけのこと(笑い)。

・ゴルフがお好きで現在ハンディキャップ14とのこと

・昨年の国際フォーラムでは、宮津社長の基調講演後にご本人も講演。そこで宮津発言「フレッツISDN1万円/月」では高すぎると非難したらマスコミが大騒ぎ。

・出井は宮津さんが嫌いであると、書かれたが、宮津さんが嫌いなのではない。独占体質が嫌いなだけである。

求められる「変革」、コーポレートガバナンス

・ヒューレットパッカード(HP)、シスコ、ソレクトロンといったところとのアライアンスの仕事で忙しい。

・HPとはフィオリーナさんを含めジョイントでボードメンバによる会合をやってきた。

・テーマは変革化企業のリーダシップ、HPはどう変革していくか

・シスコのスピード(ルータというインフラ)、ソレクトロン(EMS)の生産(製造)、HPはアプリ(プリンタ)

・上記3社はECOシステム化、すなわち、ソフトアライアンスである。

・ネットワーク時代はこのアライアンスが重要である。

・GMのボードメンバでもあるが、GMは1920年に事業部制を開始、ボードが社長を追放した。これはコーポレートガバナンス(企業統治)のスタートである。

・強すぎるCEOを追放し、取締役会が強くなった。

・閉鎖的なボード、弱い株主(今の日本のこと?)では企業は強くならない。

・変革期のマネジメントのあり方、右肩上がり、下がりで求められるCEOの資質は異なる。

日本の分析

・国際ランキングは14位から21位へ、どんどん低下。ニュージランドや台湾、韓国よりも下。何故ダウンするのか?

・プラザ合意後の円高(Exchange Rate Volatility)、企業は海外にシフト

・半導体産業の低迷

・デジタル産業への乗り遅れ、NECのPC98が強かったことが遅れをもたらしてしまった。

・金融の破綻、御神輿管理職、インタネットアクセス普及の遅れ

・日本経済の2極化、GDP成長率の半減、日本の高コスト体質

・SONY、松下、NEC、富士通等製造業10社合計と通信業、電力業との比較をすれば、通信と電力が突出した営業利益を出している。通信と電力は高コストである。

米国90年代復活の分析

・プラザ合意1985年によるドル安

・企業の徹底したリストラ(鉄鋼の町ピッツバークがソフトウェアの町に変革、自動車の町デトロイトがリストラ後150万の人口が90万人に減少(ハードランディング))

・これに比べ日本はレイオフ駄目、終身雇用依然重視。活発な競争が生まれてこない

・マイクロソフト分割についてダボス会合で議論。ブッシュはMSを守るか云々。

・完全独占→競争原理導入→大幅な競争の促進が大事

・FCCは新通信法(1996年)でお粗末なことをやった。地域会社がたくさん潰れた、17ケのHDTV規格をそのままやらせて結局普及しなかったこと等

・徹底した規制緩和

・パソコンの普及、インタネットの登場

次の米国の変革は何か?

・もたつくはずである、PDAやモバイルは遅れている。ブロードバンドも相当遅れている。

・TCI(米国No.2CATV会社、1200万加入)のようなCATVは酷い、アナログの狭帯域が多く、片方向通信しかできない。

・米国を逆転するチャンスである。

IT基本戦略会議

・NTTの電話サービスは黙っていても消滅していく、心配なのはデータサービスである。データサービスのユニバーサルは無理である。

・この5年間、NTTに変革を迫った。

・電話とインタネットは何が違うか。電話は秩序系であり、インタネットは無秩序系(インチキ状態)で安くできる。今は電話網でインタネットを仮設運用中。

・宮津さんからの提案でADSL3000万加入をぶち上げた。

・今後はIPキャリアがコモンキャリアになるはずである。

・ネットワークのセキュリティなく発達したのがインタネット、著作権など守る仕組みがない状況にある。

・電話番号とIPV6の整合をどうするか?

変革期のリーダシップ

・危機意識を創り出し、これをシェアすること(コロンビアピクチャ、SONYミュージック買収時借金経営であった。明治維新は倒幕、第二次世界大戦後は東京焼け野原。これらは皆危機意識のシェアである)

・強力なガイディングチームの編成(内閣総理大臣にコミットメント、ITチームの結成)

・ビジョン創造(5年以内に米国を抜く)

・ビジョン伝達(目標実現に向けた具体的プラン)

・短期的な計画、短期的な結果(1年以内にすべきこと)

・結果の評価、そして誉めること

エンディング

・自分達がいかに変革していくかが大切。政府が、上司がでは駄目。

・日本は金融の自由化、通信の自由化を進めているが、都会を向いた政治をしない自民党は大問題。

・現国会の二世議員は100人もいる。しかも実権もない。

・自己改革は辛いことだが、自己否定から始めよ。

・モバイル(ドコモのこと)はユビキタス(自分の行く先々にパソコンが備わって使えるようになっていること)に負けるようになる。IBMのメインフレームやソ連の崩壊同様に。

・求心力と遠心力の両方が重要。求心力は会社のブランド、遠心力は社内ベンチャ。

・生産というプラットフォームは安定、ビジネスプラットフォームは変化とスピード。SONYが工場を売却したのは、安定を捨てて、変化とスピードを求めたから。

質疑応答

・新日鉄では遠心力が働きすぎているが、会社の求心力とは何か:新日鉄の場合、会社の歴史あるいは会社そのもの。今遠心力が本当に必要なのか。鉄でしっかり稼ぐべきではないのか。求心力がなくなりつつあることの方が心配。

・真っ暗闇のインタネットに不安(NTT):その通り、早くインタネットを経験して利口になっていくべきではないか。SONYのβがVHSに負けたのはSONYが利口すぎたことによる事実もあったが。

・SONYは自社製品をどんどん切る:SONYには自己否定文化が根づいていた。自分の悪口を言いつづける文化。つまり自己否定を受け入れる文化。付き合いにくい会社かもしれないが、それは強い会社の証拠。弱い会社ほど付き合いやすいはず。

・インタネットはバリュースライサー:インタネットはサプライヤにとってきついものである。企業にとって敵である。儲けなくさせる道具でしかない。

・敗戦国日本、米国の言いなりになりすぎていないか:橋本さんと石原さんのみ米国の負債は日本の貯金と発信している。安保がある限り駄目かもしれない。

・組織のコアはビジョン(リーダシップ)、戦力(インプリメント)、調和の3点。求心力の担保は時代によって異なる。今の総務省では事業と規制、それに審判までやっている。まるで警察と泥棒の両方をやっているようなものだ。

・物理層の統一(標準化)はOK、しかし、上位層の標準化は無理。ネットワークはオープンなもの。オープンにすべきものとクローズすべきもの別々にあるはず。FWA(無線を使ったビルとビルとの通信方式)はオープンなものでさっぱり儲けない事業である(SONYはクローズな領域で儲けたいと解釈)

注)本件は平成13年2月22日のUSフォーラムでの講演をメモったもの